探検日誌2 新手の刺客

成田空港を飛び立った私は一時の安らぎの中にいた。だが、その安らぎも隣に座っている中年の女性に木っ端微塵に打ち砕かれた。
この女性なのだが、こちらが何か親切をしても御礼の言葉も言わない人間なのだ。彼女が眠っている時にフライトアテンダーがお絞りやらヘッドホンを持ってきたので、私が受け取って彼女の背もたれの袋にそっと入れといてあげたのだ。起きた時にそれを告げると「あっ」だけだった・・・。
トイレにいきたいとの意思を表したので席を立ったのだが、行くときも帰って来たときもうんともすんとも言わない。ちなみに日本語はちゃんと話せるのである。
見た感じは良い家柄の感じの人なのだが、常識が無いと人間そのものがさもしく感じてしまうのは私だけではあるまい。
そんな応対にさすがの私も疲れ果ててしまった。もしかすると新手の刺客だったのかもしれない。それだけの要員を擁している組織だとすると、私の命を狙うのはかなり大規模な組織であることに疑いの余地はないだろう。再び機内において私は危機センサーを全開にすることとなってしまった。


この探検が終わるまで私の体力が持つかどうか、さすがの私も自信が揺らいできた。
そうこうするうちに機は経由地メルボルンタラマリン空港に到着した。間違ってもらっては困るが、タマランチ空港ではない。タラマリン空港である。
そんなことはどうでもいい。ここでも私の行方を阻むさらなるトラップが待ち受けていた!
乗り継ぎのセキュリティーチェックの時である。皆様が思う以上に私は気が小さいところがある。チェックを受けるにも優しい感じの人のところへ向かってしまう私がいる。ふと見ると、柔和な感じのナイスガイが熱い眼差しでセキュリティゲートから私を見つめてるではないか。早速そのナイスガイに熱い眼差しを返し足を向けたのだが、距離が半分くらいに縮まった時に恐怖が私を襲った。なんと、ナイスガイと50歳くらいの女性とが交代してしまったのだ。悪いことにその女性は「スターウォーズ」に出てくるジャバ・ザ・ハットにそっくりではないか!!非常に怖そうな面構えだ。私は引き返して違うゲートに行こうと思ったのだが、ジャバの強力なフォースは私の身体の自由を奪った。
その引力に逆らえず、私はジャバのセキュリティチェックを受けることとなった。こうなったら私もサムライである。挑戦は受けて立つしかない。すべての武器を受け皿に置き、両手を挙げてセキュリティゲートの中に入ろうとした時だった。ジャバが血相を変えて私に言い放った。「使ったカートは所定の位置に戻してください」と!


天地神明に誓っていうが、私はカートなど使っていない。前のオヤジが使ったものなのだ。
ジャバは完全に勘違いしていた。私は「チチチ、俺は使ってねえぜ」と心の中でつぶやきシローと化していた。しかし、ここで私が大人気ない対応をすれば、オーストラリアとの全面戦争もありえる。私は大人である。踵を返すと、少し微笑みながらカートを所定の位置まで持っていった。
その時の私の笑顔は多少引きつっていたことは、私の人間の小ささが出てしまったのだろう。なんとかジャバのトラップを無事通過し、目的地パースに着いたのは午後1時くらいだった。その後、ホテルに入り今に至っている。さあ、明日から本当の探検が始まる。


探検隊長 コーディ、